ユダヤ人の名字の“売買”
ユダヤ人が名字を正式に持つようになったのは、19世紀半ばのこと。
しかし、その時もすべてが自由ではありませんでした。
自分で好きな名字を選べるわけではなく、多くの場合、名字は「買う」ものだったからです。
裕福な者は、薔薇を意味する「Rosenthal(ローゼンタール)」や、黄金を表す「Goldstein(ゴールドシュタイン)」、銀を意味する「Silverberg(シルバーバーグ)」といった、花や貴金属などの意味を持つ美しく響く高価な名字を手に入れることができました。
ところが多くのユダヤ人は貧しく、そういった高価な名字を買うことはできません。
結果として彼らは、狼を意味する名前「Wolf(ウルフ)」というのはまだましな方で、脂肪を意味する名前「Fresser(フレッサー)」や、尻を意味する名前「Hintergeschitz(ヒンターゲシッツ)」といった、侮蔑的な意味合いの名字を付けさせられることもあったのです。
時には「Eserkow(エゼルコフ)」これは「ロバの頭」というような、見下されることを意図した名前も使われることがありました。
日本における名字の取得
一方、日本でも、明治維新後に全ての国民が名字を持つようになりましたが、ユダヤ人と同じく自由に選べるわけではありませんでした。
特に農村部では、戸籍の管理をしていたお寺の和尚さんが、村人に名字を与える役割を担っていました。
そのため多くの庶民は自分の名字を選ぶことができず、和尚さんに依頼して名字を付けてもらっていたのです。
しかし、和尚さんに名字を依頼する際、タダで済むわけではありません。
和尚さんに「付け届け」としてお金を渡すことが一般的でした。
しかも、その付け届けの金額や和尚さんの気分次第で、名前の質や響きが変わるという事も少なくなかったと言われています。
高額な付け届けを渡せば、立派で響きの良い名字を得られたかもしれませんが、少額の場合はあまり好まれない名前をもらうこともあったのです。
近代に生まれた共通の歴史
こうして、19世紀半ば、日本とユダヤの両民族は「名字を手に入れる」という共通の体験をしました。
それまで名字を持たなかった人々が、社会の変化により新たな名前を手に入れたという点は、まさに同じ歴史を持つと言っても過言ではないですよね。
これまでも、古代からの共通点やつながりについては様々な議論がなされてきましたが、こうした近代における共通点を知ることで、より現実的な親近感がわいてきませんか?
もしかするとひいおじいちゃんくらいの世代の話かもしれませんよね。
実際、こういった話を知っていると、ユダヤ人と会った時に「あなたの名字の由来は?」なんて会話もできそうです。
名字というのは、私たちにとって単なるアイデンティティの一部ではなく、その人や家族の歴史や背景を映し出す大切なものであり、名前にまつわる物語は、時を超えて私たちに語りかけてくるのです。
皆さんの名字の由来は?
ここまで読んでくださった皆さんにお願いがあります!
もし、あなたやあなたの知り合いが、和尚さんに付けられたちょっと変わった名字を持っているなら、ぜひ教えてください!
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